インド通の旅仲間に薦められて、遠藤周作の代表作、『深い河』を読みました。「深い河」とは、インドの聖なる河ガンジスのこと。暗殺されたインディラ・ガンジー首相も、指の腐った手で物乞いをする女も、等しく受け入れて流れるインドを象徴する河です。
死の間際の妻から「もし私が死んだら、生まれ変わりをきっと見つけて」と言われた磯部。生真面目なクリスチャンだった大津をもてあそび、月並みな相手との結婚に破れた美津子。第2次大戦中、ビルマのジャングルで悲惨な体験をした木口…。
それぞれの道を歩んできた人間たちが、人生の意味を求めてインドへ向います。そして、ガンジスのほとりに広がる聖地バラナシで、それぞれの想いが絡み合って、物語は展開していきます。
僕は、去年初めてインドを旅することができました。バラナシがある北インドではなく、インドでもどちらかというと田舎と言われる南インドを、大陸最南端のカーニャクマリからチェンナイまで、主に鉄道で歩く旅でした。2週間で広い地域を旅したつもりが、地図を見たらインド亜大陸のほんの一部だったことに気づいて、軽いショックを受けたものです。
さて、インドにはこの世のあらゆるものが混在している国、という印象があります。例えば鉄道。座席は5段階に分かれ、最上のエアコン1等車の料金は、最低の板張り2等車の料金とは、15倍くらいの開きがあります。往来には、あらゆる乗り物、動物、人間がひしめいて、砂埃を巻き上げています。寺院の壁は、シヴァ、カーリー、ヴィシュヌ、ガネーシャその他たくさんの神々で埋め尽くされています。
そんなインドで、「母なる河」といわれるには、よほど懐の深い河でなければ務まらないはずです。
輪廻転生をテーマにした三島由紀夫の四部作、『豊饒の海』を読んで、生きることの意味を深く深く考えた後にこの本を読むと、より理解が深まるようです。『豊饒の海』でも、第3巻「暁の寺」で、バラナシとガンジス河の情景が描かれています。
ちなみに、第1巻「春の海」がこの夏に映画化されるとか。三島の美しい物語が、どんな映像になるのか、映画ファンには気になるところです。
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