かつて貧しかった国も、発展するに従って、国民の間にはしだいに余裕が生まれてくるものだ。戦争で国土を目茶々々にされたベトナムも、80年代後半の経済自由化以来、空気が一新して、日本に続けとばかりに日々の進歩に忙しい。殊に日欧からの観光客が大挙してやってきて、この国に膨大な外貨を落としていくようになった。
サイゴンから東にバスで3時間あまり。小さな漁村が点在するに過ぎなかったムイネーの浜辺は、近年、外国資本が入った一大リゾート地になった。北のニャチャンほどではないが、サイゴン近郊のビーチリゾートとして、ベトナム人および外国人観光客の人気を博しつつある。
ムイネー村とそれに隣り合ったファンティエットの町は、魚醤の産地というほか、町としては何の見処もない場所だ。浜辺沿いに一直線の往来が延びて、それに沿ってバンガローやミニホテルが建ち並んでいる。
往来でバイタクが頻りに声をかけてくるのは、サイゴンなど大都市と一般だが、その商売気においては比較にならぬほどの穏やかさだ。観光客が増えるにつれて、町の住民がスレてくるのはどの観光地も免れないが、ムイネーには、まだ古き良きベトナムが残っている。
宿の従業員や食堂のボーイなどの働きぶりは、働いているのだか遊んでいるのだか、ちょっと判断がつきかねるほどのんびりしている。が、そこに、アジアの田舎特有の鷹揚さがあって、骨休めに訪れた観光客にはかえって好もしく映る。
たまに来る観光客のわがままとは言え、この鷹揚さを、いつまでも失わずにいてほしいと思う。
<<続きを隠す