五木寛之の『知の休日』に、“靴と遊ぶ”という一章がありました。先週ここに書いたように、僕は靴にはちょっとこわだわる方で、著名人の靴に関するエッセイを見つけて読むことがあります。
西洋靴は、ブカブカさせずに足にぴったり吸いつくように履くのがツウだといいます。安物ばかり履いていた足に、銀座あたりの靴屋でこれがジャストサイズだとすすめられた靴を履くと、革にビシッと縛りつけられたような感じがします。それだけに、靴にはいろんな形があることがよくわかります。
五木寛之によると、日本人の足はもともと西洋靴には合わないのだそうです。農耕ばかりやってきた日本人には幅広甲高な足が多い。だから足の形が違うヨーロッパ人が作った靴は、日本人には向かないのだと。ヨーロッパと日本では気候もだいぶ違います。
五木さんは、足に完全にフィットする靴よりも、少し遊びのある靴を好むとか。足に合わない靴は、どんなに高価でもガラクタに過ぎないと書いています。
西洋靴でも、試着しているうちに、それほど縛られ感のない、心地良い靴に出逢うことがあります。長い時間履いても疲れない、それでいて足を包むようにフィットする。そんな靴はめったにないけれど、それを探すのは、何より楽しい時間です。
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