僕のガイドブックには、最初に「アラブの魅力、それは時間の流れが非常に穏やかなことではないだろうか」云々という文句がある。成田を出て20時間、ついに憧れのアラブに到着して、僕は劈頭(へきとう)一番にこのアラブの魅力にブツかった。
どの国に行っても、外国人はまず入国審査のチェックを受ける義務がある。で、シリアの入国審査というのが、またアラブの魅力を文字通り実践した、極めて悠長なものだったのだ。
人の少ない列に並んだ僕を指して、「お前は向こうだ」と外国人専用の列に行かせたのは良いとして、その列の係官がムダ口を利いてなかなか仕事をしないのがだいいち癪にさわる。30分以上も待たされてようやくパスポートを示すと、「お前の仕事は何だ」という質問だ。日本人にも説明が難しい説明をシリア人にするわけにはいかないから、僕は「Public work」と言いながら日本語の名刺を奴の鼻先に突きつけたところで、ついに入国許可の運びとなった。
ダマスカス国際空港は、国際空港と呼ばれるだけ、規模の大きな空港だった。夜中の2時にかかわらず、ロビー内はアラブ人でいっぱいで、なかなか喧しい。銀行やみやげ物やのいくつかは営業中で、乗客の用に供している。明かりが薄暗いのは止むを得ないとしても、一国の首都たる町の空港にはふさわし内容である。
建物、設備が備わった後に急ぐべきは、入国係官の教育問題であろう。
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