普段からコーヒー好きの僕は、今度のアラビアの旅でコーヒーを飲むのを楽しみにしていた。苦味が強く、飲めないものには一生飲めないというアラビア・コーヒーを、ぜひ本場で味わってみたと思ったのだ。コーヒーの原産はアフリア北東部かアラビア半島南西部といわれるから、元来のコーヒーの味に出逢えるかもしれない。
で、一日オールド・ダマスカスに出かけた時、僕は小路にある喫茶店に入って、念願のアラビア・コーヒーにお目にかかった。
注文する際にスイートかミディアムかノンシュガーかと聞かれるので、こちらの希望を伝えるとやがて仰せのとおりのが来る。苦味が強いので、カップはエスプレッソを飲むように小さく、ミルクや砂糖のような付属品は一切つかない。カップの中身を見ると、なるほど僕が普段飲むコーヒーよりもドス黒い、透明感のない液体が入っている。僕のガイドブックに、しばらく待って、コーヒーの粉が沈んでから飲めとあるので、それに従って恐る恐るカップを口に運んでみた。
初めて飲むアラビア・コーヒーは、雑味が強くてすこぶる苦い。パルミラで会ったオーストラリア人が、「夜にあれを飲んだら眠れなくなった」と言っていたが、確かに夜などに飲めるシロモノではないと思った。
アラビア・コーヒーの豆は、日本で飲むような粗挽きでない、ほとんど粉のようなものだ。それを沸騰したお湯にスプーンで2杯くらい入れて、さらに1分程火にかける。こうしてカップに注がれると、極めて苦いコーヒーらしいコーヒーが出来上がる。
気候の激しいアラビアの地に暮らしてきたアラブ人が、いまだ世界に一勢力を保っているのは、このアラビア・コーヒーを何百年の間飲み続けたところに原因があるのかもしれない。
僕は、日本に帰って早く日本のコーヒーが飲みたいと思った。
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