高松塚古墳の彩色壁画のニュースが、大きな扱いを受けています。教科書でもおなじみの、金銀箔で彩られた男女4人の群像。そこに新たな黒カビが発生したとかで、特に産経新聞などは一面で紹介しています。
今の仕事に就かなかったら、研究者の道に進んだ(かもしれない)僕には、注目せざるをえないユース。高松塚古墳は、7世紀末から8世紀初頭、奈良時代に入るか入らないかという時代の古墳です。壁画は1972年の発掘調査で確認され、「中国風の墳墓壁画の最初の発見例」と、僕の手元にある『角川新版日本史辞典』に出ています。
壁画は1300年も前の遺産なので、非常にデリケートで損傷しやすいもの。今にも剥がれそうな漆喰の上に描かれていて、カビなどによる劣化も心配です。キトラ古墳の石室に描かれた「白虎」は、ついに壁面から剥がされて保存することになりました。
僕が歴史に惹かれるのは、はるか昔に造られた、または描かれた文化遺産を前にすると、徐にその時代の空気、景色、人々が想像されて、そこに言いようのないロマンを感じるからです。法隆寺の金堂を見上げながら、1300年以上前の人々と同じ光景を見ていることに恍惚とする。そこが歴史の一番の魅力です。
日本が世界に誇るべき文化遺産を、どんな手段を使ってでも保存してほしいと、願って止みません。
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