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04.英国の結晶

ホワイト・ホールからパーラメント・ストリートへと歩いて来ると、左側にビッグ・ベンと国会議事堂即ちパーラメント、右側にウェストミンスター寺院のゴシック風の建築が見えてくる。倫敦を訪れた外国人が、もっとも倫敦的色彩を感じる光景だ。
 で、英国の結晶と称えられるウェストミンスター寺院を実際に初めて目にした時の、僕の正直な感想は、想像していたよりもみすぼらしい、薄汚れた石の寺だというものであった。まさか、永年太陽の光を浴びている間に縮んでしまった訳でもあるまいが、話に聞いていた内容からすると、どうも見栄えがしないように思われる。6ポンドの入場料はあくまで倫敦名物たるに背かないが、果たしてその実は伴なうのか。
僕はかかる疑問を感じながらも、北側の入口で6ポンドを渋々支払って中に入った。
 北側の入口一帯は、いわゆるステーツマンス・アイル(政治家の廊下)と呼ばれている。入ってすぐ右側では、チャザム伯大ピットが右手をかざして、はるか頭上で演説をしている。ふと左を見ると、ダウニング父子が石像になって立ち、その隣にディズレイリ、グラッドストン、パーマーストンの石像がある。ウェストミンスターでは床下に遺体を埋めて祀っているのだが、これらの偉人たちも例外なく地面に埋められて参拝者に踏みつけられているのは、日本人からするとちょっと異様だ。
 政治家の廊下から左に折れると、王たちの家と称する一帯だ。何とか何世という王様連が、大抵は夫婦並んで仰向けに寝かされていたが、生涯独身のエリザベス1世はやはり1人で眠っている。
 順路に従ってヘンリー7世チャペルの精巧な天井細工に感服した後、さらに王たちの家を進むと、やがて詩人小路(ポエット・コーナー)に突き当たる。詩心のない僕に見つけられたのは、シェイクスピアとD・Hロレンスのみであったが、ここでも無数の石像と床下の墓碑が参詣人の足を留めていた。

 ポエット・コーナーから会衆席を経て、クリストファー・レンが建て増した西の入口にかけてが、ウェストミンスターの内観上最も迫力のある場所だろう。外観上は僕の目にもあまり振るっていそうに見えなかった姿が、一種の威厳を伴なって眼前に現れたのだ。あまり幅のない本堂の天井から、筋の入った柱が二列に並んで西の入口の方へと続いている光景は、100フィート程の天井を、その何倍もあるかのごとき錯覚を起こさせる。

 この世で行われた幾多の激烈なる歴史上の争いも、今や諸行無常の空気のうちに静かな眠りについている。それらを一堂に集めるウェストミンスター寺院は、英国の結晶と呼ぶに相応しい存在だ。
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