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芥川作品を読む

 芥川作品で今まで読んだものといえば、『羅生門』と『蜘蛛の糸』くらいしか記憶がありません。そもそも文学にはあまり馴染んでこなかったので、この歳になって今慌てて読んでます。英国人の教養ある人物が皆シェイクスピアをたしなむのなら、日本人は自らの国民的文学を知るべきです。
 近ごろ、古本屋で『地獄変』(集英社文庫)を見つけて、芥川作品に触れるチャンスを得ました。この文庫には『地獄変』のほかにも11の短編が収められているので、気軽に読めるのが嬉しい。『芋粥』『鼻』『トロッコ』など、見知った作品もあります。いまさら気がつくのも恥ずかしいのですが、そういえば教科書で読んだな、という作品が多いですね。

 三島由紀夫の『豊饒の海』4部作を読んだ時、三島は哲学者のようだと思いました。で、今回の芥川短編集を読んでの印象は、まるでスナイパーだ、というものです。人間の本質をズバリと、しかも端的に描く。何だか僕の師匠の夏彦翁のようです。

 ただ、夏彦翁は「真面目なことを言う時は常に笑いを帯びなければならない」と言ったのに対し、芥川作品は常に真顔で、ものによっては深刻な表情で語っているように感じます。あの肖像の鋭い視線が、そう思わせるのでしょうか。

 昭和2年7月、「ぼんやりした不安」という有名な文句を残して、彼は自殺を遂げました。
映画・読書 | comments (2) | trackbacks (3) admin

Comments

睦月 | 2006/05/11 02:22 AM
こんばんわ。
私、一時芥川作品にハマッた時がありました。ちなみに今は江戸川乱歩に読みふけっております。
≫、「ぼんやりした不安」という有名な文句を残して
・・・ぼんやりした不安。ああ・・・とても痛烈な一言。きっと誰しもが持っているぼんやりした不安。私もこの不安に陥ります。でも彼が抱いていた不安って・・・実はぼんやりではなく、実に明瞭なものだったのかも・・。いずれ、ミステリアスでありながら、ガラスのような繊細な心をもった作家・・・芥川氏にはそういった印象があります。もう一度、芥川作品に立ち返ってみたくなりました。
HARU | 2006/05/11 10:47 PM
睦月さん、芥川小説のファンでしたか。
今日は『地獄変』を読みましたが、読者を強烈にひきつける物語だね。
「ガラスのような繊細な心をもった作家」。
ほんとにその通りかもしれません。

また立ち返る価値はあるでしょう。
歳を重ねたら、違った感じ方ができるんじゃないかな、と思います。

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