隠岐島後の北東部、薄暗くて気味の悪い杉林の中を、ただひたすら上っていく。島で最も高い大満寺山の山頂近く、寒々とした斜面に突如そびえる乳房杉。雪に押しつぶされたシダの葉を踏みしめて、枯れ木が音もなく風に晒される光景の中に立ちつくす。
隠岐には神社も数多く残るが、巨木信仰があるというのがまた面白い。一説によると、隠岐の巨木信仰は縄文以来のものだとか。その時代、島から出る黒曜石は、丸木船に乗せられて日本列島はもちろん、朝鮮半島や沿海州にも運ばれている。隠岐に、豊かな縄文文化が花開いたとしてもおかしくはない。
長い長い年月、そういう祭りを伝えてきた村々の人々の暮らしにも、思いを馳せる。ある神社に立つ木には、縄で作った蛇(龍?)が巻き付けられていた。愛嬌のあるその姿から、村人たちの温かさが伝わってくるようだ。そんな営みが、いつまでも続いてほしいと願う。

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